FC2ブログ
 
 
 
 
 
介護人メイルの、悔悟、改悟、開悟、戒護。
 
 
 
 
 
 

介護。開護。そして、ロバート・レッドフォード。

 
メイルは都会生活しか知らない。
子どもの頃から林間学校などで、のどかな高原に行って、せっかくのんびり過ごせる環境なのに、少しも落ち着いたり、のんびりゆったりできず、それこそ虫を見ただけでたじろぎおののく、本物の虫も殺せぬ人間である?。
それに、やたらと蚊に刺されたことが、その嫌悪感を増長させた。
さらに、こともあろうに、地方の山間の大学に入学し、「ファイブ・イージー・ピーシーズ」のような理不尽な集団暴行を経験させられたから、余計嫌いになっている。
それらが原因で、さしずめ緑色PTSD、閉塞感恐怖症になった。
「こんな何もないところで、一日だって暮らせない。こんなに視線が五月蝿いところは好きじゃない。にぎやかな都会の雑踏で、肩をぶつけては罵り合い、足を踏まれては怒鳴り合い、満員の野球場や映画館やコンサートに行ってはバカ騒ぎ、デートは分不相応でも一流高級レストラン、そんな暮らしじゃなきゃイヤだ、我慢できない」
いつのまにかメイルには、それが当然の日常になっていた。
都会生活しかできないと決めていた。
しかし、こうして介護に明け暮れる毎日になって、自分までがいつ被介護人になってもおかしくない年齢になって、そんな瑣末的な気晴らしもできなくなって、逆に、
「果たしてこんな人生でいいのだろうか?」と自戒的に悩み始めていた。

メイルは地方にある父親のホームに向い、まだ少しも春めいていない田園地帯の中を車で走りながら、
「考えたら、いつまでこんな風に働けるのだろう?どこまで父親の介護を続けてあげることができるのだろう?自分にまさかのことがあったら、父親はどうなるのだろう?」と、
考え始めていた。
確かに、そこそこの収入があったからこそ、無我夢中で続けてきた介護だが、ほんとうに驚くほど費用がかかり、いまやそのことが、自分の死の恐怖よりも、大きな不安と懸念になっている。

メイルは、「モンタナの風に抱かれて」のロバート・レッドフォードに強い憧憬を覚えている。
そのhorse whisperer (ホース・ウィスパラー:馬の心を理解できる人)という職業自体に興味を持った。
馬は、人間よりも早く地球に生まれ、人間に力ずくで単なる食料にされ、長い年月をかけて人間の使役や乗馬に利用されるようになったらしい。
そう言われてみて、初めて、メイルは、
「へぇ、そうだったんだ」と感嘆させられた。
考えてみれば、アフリカのサバンナで馬の仲間みたいなヌーは、肉食獣の格好のエサにされているのだから、当然なのかもしれない。
それよりも、そんな臆病で繊細で感受性の強い馬とコミュニケーションができる人間に感動させられた。
ある雪の早朝、「Pilgrim(ピルグリム)」という馬とその主人である13歳少女が、親友と一緒に乗馬中、偶然滑落事故が起こり、そこに現れた大型トラックの前に、ピルグリムが立ちはだかり、その主人の少女を助けようとして大ケガをする。
しかし、残念なことに、その少女は、右足切断を余儀なくされ、少女の親友は事故死する。
ちょうど多感な年頃だった少女は、自分の将来を悲観するだけでなく、親友が死んで自分だけが生き残ったことによるサバイバーズ・ギルトになり、自分は生きてゆく価値すらなく、2度と誰からも愛されはしないと思い込み、自暴自棄になる。
そして、その馬は、主人である少女を救えなかったことに対する自責の念から、極めて粗野な野生の馬と化してしまう。
その後、その少女を必死に勇気づけようと試みる両親の葛藤、男社会の中で生き抜く第一線のキャリアウーマンである母親とその少女との相克、両親の中に広がる夫婦間の相互不信。
そして、ロバート・レッドフォードが、馬のピルグリムの心の傷を癒しながら、その少女と両親の心までを、清々しくより正直にさせてゆくストーリーに、心を奪われた。
特に、ロバート・レッドフォードが、まるで馬とほんとうに会話をしているような、なんともいえないバイブレーションによるコミュニケーションのしかたは、いまの人間に一番不足している本物のコミュニケーションのありかたを教えてくれる。
メイルは、自分と両親とのコミュニケーションを思い出してみた。
両親が年を取ってからは、いつのまにかうわべの言葉だけでの会話しかしなくなっていて、両親のちょっとした仕草や雰囲気から、何かを感じ取る努力を間違いなく怠っていたと悔悟させられた。
そのほかにも、気が遠くなるような大自然の中で、少しも肩ひじ張らず同化して自然とともに暮らしているロバート・レッドフォードに、少女の母親が思わず尋ねるシーンが印象的だった。
「何も怖いものなんかないでしょう?」
「いつまで働けるのか、それが一番怖い」
メイルはその言葉に耳を疑った。
「あんな風に生きていても、そんなことを考えるのか!」
またさらに、いつのまにかキャリアウーマンとしての自負、母親としての責任感から、ただただ自分に無理をして生きている母親に、そんなロバート・レッドフォードが恋をする。
「まさか自分がまた恋をするとは思わなかった」
「私も、いまさらこの気持ちを抑えられない」
「こんなところでほんとうに暮らせるのか?夫に、娘に言えるのか?」
「簡単なことではないわ」
「簡単なことだよ」
この会話は、いまのメイルには、とても重かった。
いろいろなことがいろいろに絡み合い、複雑で、どうしていいかわからないと身勝手に考えていたメイルにとって、それがどれだけ言い訳だったかを痛感させられた。

介護に明け暮れていたために、確かに仕事がおろそかになっていた。
時間がないために、プライベートな時間が何もなかった。
いろいろなストレスが重なっているから、「すべてがグチャグチャになっているのだから仕方がない。自分の力ではどうしようもない」
と、確かに情けないことに、いつも心の片隅で言い訳し続けていた。

介護を始めて以来、メイルは初めて、介護費用の件で、たった一人の兄に正直に相談した。
ところが、資産のある兄は両親に経済的余裕がないのは、若いころのメイルの浪費のせいと責めるだけだった。
「よくわかった」
最初から期待はしていなかったが、それでもやはり失意のどん底になり、メイルの心から、兄弟はいなくなった。
こんな時代らしく、モノを持ってしまった人間は、そのモノを減らすことや失うことを必要以上に怖がるものらしい。
そして、メイルには、それをとやかく言う権利も憤慨もなかった。
それに、事実、メイルはその浪費自体をイヤというほど自覚していた。
でも、そんな兄の本音がよくわかっただけで、逆にひとつのストレスが減った気がした。
人はどこまでも、人それぞれ。
父親は平気で、「たった一人の兄弟なのだから仲よくしなさい」とメイルに言うが、いくら一生懸命説明しても、いまの父親では、いまの気分を理解できはしないだろう。
メイルは、もう笑うっきゃなかった。



☆介護の重要ポイント16
コムスンの破綻でもわかるように、介護施設の選択次第で、被介護人はもちろん、介護する家族にも、重大な問題が生じてしまう。
やはり、最初が肝心。
労を惜しまず、自分の目で、その施設をいやというほどチェックしたうえで、全てに綿密な計画がいる。
いくら力んでみても、現実的には信じられないほど費用がかかる。
それを絶対に肝に銘じるべき。




スポンサーサイト



 
 
 
 
 
 

開護。介護。そして、ダニー・デピート。

 
メイルは父親から直筆の手紙を受け取っていた。
内容は、相変わらず自分勝手なものでしかなかった。
「自分のいつも使っている化粧品とフリカケ、そして自分のアルバムを持ってきて欲しい」、それだけだった。
にもかかわらず、2週間は経つのに、メイルは父親のホームをまだ尋ねていない。
その手紙を、デスクの前に飾ってある母親の写真の隣に、ピンで留めてある。
だから、母親に毎日水を上げるたびに気づき、決して忘れたわけではない。
これには、言訳がましいかも知れないが、2つの理由がある。
1つは、ホームには毎月そのような日用品や消耗品を買うために現金を渡してある。
それゆえ、親切な介護士さんたちに、父親が直接頼めば、何でも買って来てくれるはずなのである。メイルもよくわからないのだが、たぶん父親の言っている化粧品が、男性化粧品発売当初のもので、その辺のコンビニやスーパーで売っていない骨董品に近いものなのだろう。それに、せっかく外国製高級化粧品を置いてきたばかりなのである。
次に、フリカケは、暗にホームの食事が不味いと訴えているだけでしかない。
最後に、父親のアルバムは、A3大、手作りハードケース入りの大きなもので、モボ(モダンボーイの略)な上に几帳面で収集家の父親らしく30冊以上もあり、持ち出すのも運ぶのも、それこそ大変な代物なのである。
そして、ほんとうの理由は、ただ時間がないだけである。
3年も介護に奔走している間に、仕事が大変な危機的状況になってしまったからである。
これも、メイル自身、介護が始まる前には、全く予想だにしていなかった一つだった。

メイルは、いま「勇気あるもの」のダニー・デピートの心境である。
重要な会議に交通渋滞で遅れ、職を失い、初めて失業保険局に行っての職員とのやり取りには身につまされるものがある。
ダニー・デピートは、メイルと違って、広告大賞まで獲得している優秀な広告マンであり、優秀な大学まで卒業したのに、そんなことになってしまうのである。
メイルは「ケ・セラ・セラ(なるようになる)」なんて、のんきに言っている場合ではなかった。
迷惑をかけてきた周りの人たちのためにも、そして、まだ介護を必要としている父親のためにも、まだまだメイルは踏ん張るしかないのである。
それにしても、ダニー・デピートがクビになり、自宅に帰り、留守番電話を聞くシーンが、他人事とは思えなかった。
「家具屋ですが、お支払いいただけないようなので、家具を明日引き取らせていただきます」という冷やかな男の声。
「いろいろと当たったけど、ダメだった。バイトみたいな仕事でも見つけたらまた連絡する」という親身じゃない声。
「新聞代を払ってください」という新聞少年の切ない声。
そして、別れた妻と暮らしてる娘からの、
「パパにお願いがあるの?天文学クラブでメキシコに行くの。ワタシも行きたいので費用を出してください。もうママの財布は空っぽです」と哀願する声。
父親にとって、どんな情況下になっても、娘のお願いほど無下にできないものはないのである。
ダニー・デピートはやむを得ず娘をベースボール見物に連れ出し、さりげなく説得に入る。
「メキシコはクソ暑い」、
「スリ、強盗は日常茶飯事」
「食あたりでトイレに座りっぱなし」
「天文学やって何になる?星を見つけて金になるのか?星占いなら少しは稼げるかも知れないが…」
「いじわる。パパはワタシのことを分かってない!」
ダニー・デピートはそうして、娘をついには怒らせてしまうのである。
メイルには、いまの自分と父親の関係が、この2人のように思えてしかたない.。
この頃、ことあるごとに、
「父さんには悪気なんか微塵もない。齢を重ね、多少認知症に近いものが出てきているかも知れないけど…母さんが死んで寂しいせいなんだ。だれだって死と面と向かい合いたくないに決まっている」と、
メイルは自分自身に言い聞かせている。

結局、ダニー・デピートはその後、失業保険局の斡旋で、落ちこぼれ海兵隊員たちのための期間臨時教官として3食住宅付きで働き始める。
そして、毎朝毎晩、その脳ミソの腐った隊員たちとのペーソスいっぱいの不思議なリレーションシップを作ることによって、お互いに勇気を持ち合い、人間としても成長してゆく感動のヒューマン・コメディである。
できるものなら、正直、メイルも今すぐダニー・デピートのように生き直してみたいと考えたりしてみるものの、そんな勝手はどこからも許されるはずもなかった。
海兵隊の宿舎に入って道を尋ねた時の
「ここには母音がないのか?」という呟き。
初めて脳ミソの足らない生徒たちを前にしての、
「脳ミソのないキミタチはオレと話したくないだろうが、オレも脳ミソのないキミタチと話したくない」という挨拶。
この2つのセリフは、いまのメイルのある心情と共鳴し、痛快窮まりなかった。

勇気あるもの勇気あるもの
(2003/07/24)
ダニー・デビート、グレゴリー・ハインズ 他

商品詳細を見る


メイルは子どもの頃から、緑色がなぜか大嫌いだった。
決して都会育ちという訳からではなかった。
事実、メイルの子ども時代には、近所の原っぱ、川の土手、お寺の境内や大きな屋敷の周りに、まだまだ緑が豊富にあった。
その弱々しくてうそっぽくて、それでいてべたっとジメジメまとわりつくような、緑色の感じが、生理的に嫌いだったのである。
だから、お絵書きの時間に、変人扱いをされ、子ども心に傷ついていた。
葉っぱを淡いブルーで描いたからって、なぜ気味悪い子どもと言われるのか、全く納得できなかった。
だから当然、メイルの衣類には、もちろん、ありとあらゆるものに緑色がなかった。
そのことだけには、逆に異常と思えるほど、完璧にこだわった。
そんなメイルだったはずなのに、その直感に従わず、緑色の会社と関わってしまったことを、いま間違いなく後悔している。
生きている限り、このダニー・デピートのように正直に、他人と接していたかった。


☆介護の重要ポイント15

脅かすつもりはないけど、いまや介護は、死と同じ。
徒然草の「沖の干潟遥かなれども、磯より潮の満つるが如し」と、自分の死のように、いつも覚悟を決めていないと、その突然の対応には苦慮する。
メイルの全ての不覚はそこにあった。
自分はいつ死んでもいい。自分が死んだ後のことまで、自分ではどうすることもできない。
そんなふうに悟っておけば大丈夫と、安易に構えていてはいけない。
こんなせち辛い世の中なのである。
「まさか自分の親があんな姑息で稚拙なリフォーム詐欺や振り込め詐欺に掛かったりしない」と高をくくっていては絶対にダメ。
加齢はやはり加齢以外のものでなく、間違いなく判断力を鈍化させている。
困ったことに、悪いやつほどよく眠っているので、稼ぐためには結構狡猾で強かなのである。
メイルもいまだに自分が放置していたのが失敗だったと後悔しているから、
「まさか、あんなに聡明で瞬断力に富んでいた両親が、特に母親が…」
と、受け入れてない。
それが非現実感に繋がり、経済的なことを無視した介護をしてしまうのである。

どちらにしても、両親の介護や死について、早くから腹を割って、親子で、兄弟同士で、十分に話し合っておくことが肝要と伝えて置きたい。



ブログランキングに、投票おねがいします。 

 にほんブログ村 介護ブログへ
 
 
 
 
 
 
プロフィール
 

介護人 メイル・GIVEソン

Author:介護人 メイル・GIVEソン

介護なんて、「する側」も「される側」も現実であってほしくないと毎日願って過ごしている。
ある日突然、前ぶれもなく目の前にそれが現れた…。

東仙坊の、介護用ハンドルネーム「メイル・GIVEソン」が、好きな映画と対照して、お届けする介護ブログ。
bnr-tosenbo-kaigo3.jpg

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
PR
 
 
 
 
 
 
 
QRコード
 
QRコード
 
 
 
 
 
 
ブログランキング
 
 
 
 
 
 
 
ブログ内検索