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介護人メイルの、悔悟、改悟、開悟、戒護。
 
 
 
 
 
 

介護を超えて、悔悟のままに、「リチャード・ギア」のごとく

 
メイルは、ようやく蒸し暑くなってきて、ホッとしながらも、毎日悩んでいる。
エアコンをつけると寒いし、消すと暑い。
それが加齢による体温調整機能不全と自覚しているから、余計、複雑。
特に、就寝を決めてからは、まさにハムレットの気分。
エアコンをつけたままだと風邪を引きそうで、エアコンを消したままだとウだるようで、眠れない…。
それがどれだけ贅沢な悩みだとも感じているから、自分を恥じて、ますます眠れない…。
そのせいなのか、毎晩、母親の夢を見る。
脳梗塞で、自由に体も動かせなくなったばかりか、命よりも大切だと思えた喋ることもできなくなり、5年以上の介護度5の後に、不満のまま息絶えた母親が、なぜか今はもう失った家の台所で、天婦羅を揚げている。
メイルは、油の火が心配で、チラチラ母親を見るのだが、一向に止めようとしない。
気がつくと、テンコ盛りの精進揚げが、母親の前に揚げ上がっている。
「母さん、そんなに作ってどうするの? こんなに暑いのに、誰がそんなに食べるんだよ。もう十分じゃない?」
「……」
視線をチラッとメイルに向けるが、母親は黙ったまま天婦羅を揚げ続けている。
「あっ、母さんは話せないんだ」
メイルは一瞬すまない気持ちになって、狼狽する。
そのせいか、自分の額から、汗が滴り始める。
どんどん積み上げられゆく天婦羅も、凄く熱そうで、ますます汗がほとばしり出てくる。
そのとき、母親が全然汗をかいていないことに気づいて、メイルは目が覚めた…。
実際、自分の体が汗びっしょりなことに気づいて、メイルは苦笑いしていた。

不意に、メイルは、「runaway pride(邦題:プリティ・ブライド)」の「リチャード・ギア」を思い出していた。
「USA TODAY 」の有名コラムニストであったリチャード・ギアは、バーで、自分のガールフレンドから、
「ワンミニッツマン、1分しか持たない男」と揶揄され、
「ラストミニッツマン、自分は最後の瞬間にいかせる男、最後の最後で仕事を片づける男」とやっと嫌味を言い返した反動で、その後、その自分のコラム「Hit & Run (この名前に、メイルは感心していた…)」で酔っ払い男から聞いた話をネタに、逃亡する花嫁と題し、世にはびこる女どもの仕業、母親、処女、娼婦、老女などの酷さ、タチが悪くて、気まぐれで、情熱的で、残酷で、浮かれたり沈んだり身勝手な女性の批判を展開し、地下鉄で人を押しのけ、人が止めたタクシーに乗り、エレベーターの中で香水の匂いをプンプンさせる女性を糾弾した。
メイルにとって、このリチャード・ギアの行動は、他人事ではなかった。
メイルは、自分の母親に本当に似て、言いたい放題だった。それこそ、母親同様言わずにはいられない性格だったからである。
お陰で、リチャード・ギアが前妻の編集長に、「報道の鉄則-1 虚偽を書いた者は解雇に」と言われたとき、
「報道の鉄則-2 前妻と一緒に仕事をするな。手を叩いてお仕置きをして」としか言えなかった、
「永久にクビ」と言われたとき、
「……」と黙って出て行ったリチャード・ギアに、何か言ってやれとメイルは腹を立てていた。
ただ、このときの「ボクは何も捏造していない」という英語、「I didn't cook anything up」には、胸を打たれていた…。
また、その女性敵視の、老女への侮蔑の記事で、街を歩いているリチャード・ギアが、突然老女から新聞でたびたび殴られても、何も言い返さないのを歯痒く感じていた。
メイルは口うるさい母親に何か言われるたびに、言い返して、必ず口ゲンカになっていたからである。

そして、やがて、名誉挽回のために、逃亡する花嫁ジュリア・ロバーツと出逢い、恋に落ちてゆく「プリティ・ウーマン」型ラブコメディなのだが…その逃亡する花嫁を慰めようとドライブに誘い、初めて自分の話をするときに、リチャード・ギアが、
「自分の父親は印刷業をやっていて、ボクを音楽家にしたがった。母親は、小説家にしたかったようだが」と言った。
そのとき、メイルは、母親がメイルの顔さえ見れば、
「コックになれ。オマエはコックに向いている。コピーライター何て言う小説家もどきなんて止めて、コックになれ。こんなに料理がうまいんだから」と言っていたことを思い出していた。
と同時に、
「オマエはなぜきちんと結婚してあげないの? 彼女が可哀そうよ…オマエは女の敵よ。心の曲がった皮肉屋、冷血動物、最低なバカ」と続けた。
この言葉は、映画の中で、ジュリア・ロバーツが、リチャード・ギアに対して同じようなことを言うシーンがある…。
ただし、メイルは母親に、
「母さんに似たイヤな性格なんだから、仕方ないだろ」とすぐ言い返していた。

どちらにしても、このリチャード・ギアを思い出したことで、やっと見た母親の夢の意味がわかった。
母親は特別好物なものがあったわけではないが、精進揚げを食べるのが好きだった。
それが自分の意に反して脳梗塞で倒れて以来、ほとんど口から何も食べることができなくなってしまった。
5年以上もである。
その辛さ、もどかしさ、おそらく話すことができなくなったことと同じくらいだったに違いない。
人間は、口から食べることができて、初めて生きていたくなるに決まっている。
それなのに、世界中で、母親のような病気のせいではなく、食べたくても食べられない人たちが大勢いる。
メイルは、今、自分を支えてくれる人たちの世話になっていながら、毎日、きちんと食事を口から食べることができている。
どうやら、母親はそのことにちゃんと感謝を忘れるんじゃないと言っている気がする。

ところで、この映画の中で、メイルがビックリしたシークエンスがある。
最後の方で、ジュリア・ロバーツがリチャード・ギアに愛を告白するときのことである。
「I guarantee that we'll have tough times.(2人には辛いときがあるだろう)
And I guarantee that at some point...one, or both of us, will want go out.(そして、1人が、2人ともが心が離れるときもあるだろう)
But I also guarantee that if I don't ask you to be mine...(でもここで自分のものになってと言わなかったら)
I'll regret it for the rest of my life(残りの人生でそれを後悔するだろう)
because I know in my heart you're the only one for me(なぜなら自分の心の中にはあなたしかいないから)」
それを聞いて、リチャード・ギアが、
「That's a pretty good speech(ステキなスピーチだ)」と応えたシーン…。
この直後、映画では、ジュリア・ロバーツがリチャード・ギアから借りた言葉と言うのだが…。
実は、メイルにも全く同じ経験があった。
なぜかその彼女はメイルの母親となかよくなり、2人がかりで、メイルに結婚を迫ったことがあった。
そして、同じようにステキな告白をした。
メイルは一瞬感動して、内心、覚悟を決めていた。
ところが、その数日後、メイルが彼女に、
「キミがあんなに詩人だと思わなかった」と言うと、
「えっ、あれはアナタがワタシに言ってくれたことよ」と答えた。
メイルは、全く覚えていなかったことに、ショックで、自分が彼女にそんなことを言ってしまっていたことがショックで、結婚できなくなってしまったのである。
もちろん、このことは彼女にも、そして最後まで彼女のためにメイルを泣きながら怒った母親にも言ってはいないが…。
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プロフィール
 

介護人 メイル・GIVEソン

Author:介護人 メイル・GIVEソン

介護なんて、「する側」も「される側」も現実であってほしくないと毎日願って過ごしている。
ある日突然、前ぶれもなく目の前にそれが現れた…。

東仙坊の、介護用ハンドルネーム「メイル・GIVEソン」が、好きな映画と対照して、お届けする介護ブログ。
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