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介護人メイルの、悔悟、改悟、開悟、戒護。
 
 
 
 
 
 

介護を超えて、悔悟のままに、「アラン・ドロン」のごとく。

 
メイルは、人生で最大の岐路に立たされている。
両親が立て続けに他界し一年、ようやく自分の人生を顧みる余裕ができた途端、どこにも自分の人生の原型が見つからない。
間違いなく親孝行してこなかったという自責の念、悔悟が大き過ぎたせいかも知れない。
ゴム風船を夢中に膨らませ続けるように、やみくもに力を入れた介護の無理が、経済的破綻を招くことを一度も考えなかったツケだった。
パーンと風船が破裂した後には、ゴムの破片が無残に残るだけだった。
それでもなお、メイルは絶望も焦燥もしていない。
誰に何を言われても、経済的理由で介護を放棄するくないなら、人間を辞めるべきと断言できる。
生きる者はやれることをすべてをやるのが人間であることに、間違いはない。
その結果、否応なしに観念する必要に迫られてもである。
もともと北極の氷のように溶け始めていた自分の微かな財は、二人同時介護という超現実によって、これまた北極海の氷のようにほぼ溶け切ろうとしている…。
メイルは、生まれて初めて、極端な耐乏生活をせざるを得ない状況に追い込まれている。
だからと言って、世の中に大勢いるヒトたちのように、安直に自暴自棄になるわけにもいかない。
陰になり日向になり自分を支え続けてくれた人たちへの義理を、感謝を忘れるわけにはいかないからである。
「そのプライドを捨てたら人間じゃない。その報恩を忘れたら死ぬ価値も生きる価値もない」
メイルはますますそう信じている。
と同時に、介護に直面して初めて、世の中で言われている通り、「人間は独りで生きているのではない」と改めて痛感させられている。
しかしながら、現実の厳しさもまた同様。
愛だけで生きていける世界など、どこにもない。
あれほどファッションにプライドを持っていたメイルが、今は着た切りスズメで、無精ヒゲを生やし、タバコを吸い続けている。
食事を減らしてまで、タバコを買い続けている。
しかも、タバコをどんどんキツイものに戻し、昔のようについに「ゴロワーズ」のジタンにしている。
そして、壊れたバイクのマフラーのようにモクモクと煙を吹き出しながら、アラン・ドロンをいつも思い出している…。

映画「高校教師(Le Professeur)」のアラン・ドロンのタバコの吸い方は、メチャクチャ印象的。
まだ20代そこそこの大学生だったメイルが、その映画で影響を受けたのが、「ゴロワーズ」とファッションだった。
ラウンドのセーターにウールのコート、クシャクシャにして持って歩くのが両切りの「ゴロワーズ」が、すぐにメイルのお気に入り、定番になった。
ところが、メイルの母親がその強烈なクセのある臭いを嫌がった。
自分だってタバコを吸っていたくせに、「そんなに臭いタバコを何で吸うのよ…カラダに悪いに決まっているわよ」と口うるさかった。
かつて同じ両切りの「缶ピース」を吸っていて、健康のために禁煙したメイルの父親までが、「そんな臭いタバコ止めた方がいいぞ」と言うほどだった。
今考えると、戦争でイヤな気分をたっぷり味わった両親にとって、独特の舶来の臭いが生理的に嫌いだったのかも知れない…。
それにしても、アラン・ドロンの喫煙は凄まじかった。
今、世界中で肩身が狭いタバコ会社が、その当時、涙を流して大喜びしたに違いない。
薄汚れた格好のうらぶれた雰囲気の中年高校臨時教師、アラン・ドロンは高校に行き教壇に座るやいなや、生徒を放ったらかしにしたまま、タバコの吸い放題…。
その様子はアンニュイどころか、デカダンの極み、まさにヤケクソ。
そこに、メイルは心から共感を覚えていた。
映画そのものは、イタリア語の原題「La prima notte di quiete」が示す通り、 「安楽の最初の夜」、「死後」が奏でる、アドリア海に面した北イタリアの小さな田舎町リミニという海辺の町を舞台に描かれた哀切極まりない悲劇の愛のラブストリー…。
過去に従姉妹の少女を16歳で亡くし、別の男から略奪した妻との愛に冷め、賭博場に通い詰めるアラン・ドロンが、複雑な家庭に育った高校生美少女と激しく燃える恋に落ちる。
その美少女も高校生とは思えない衝撃的な生き方をしていた…。

メイルには、ちょうどそのころ、アラン・ドロンが愛した少女のようなガールフレンドがいた。
しかも、メイルの彼女も高校生だった。
そのうえ、そのガールフレンドには、映画と同じに「もう二度とウチの娘に会わないでちょうだい」とメイルに狂ったように叫ぶエキセントリックな母親がいた。
母子家庭であるがゆえに、彼女の母親には、ヒッピーのような大学暮らしをしていたメイルなど眼中になく、まさに映画同様リッチな意中の娘の相手がいたからだった。
そのような打算的な女性の言動には、一切の躊躇いも同情もなかった。
彼女の母親は、何とメイルの母親に直談判した。
「お宅のバカ息子、いい加減に諦めさせてください。ウチの娘には、もっとちゃんとした彼氏がいるんですから…」。
これには、今までガールフレンドに関して何一つ言ったことがなかった、メイルの母親がキレた。
「メイル。彼女自身がいい娘なのは、私も知っている。遊びにくれば、ちゃんと受け入れてあげている。
それに、彼女のオマエへの気持ちもわかっている。でも、もうそういう話じゃないわ。彼女とはつきあうのだけは止めなさい」…。
黙ったまま臭いタバコを吸い続けていたメイルが家を出たのは、翌日だった。
「愛してる」と一方的に言ってきたのは彼女の方だったから、納得いかなかった。
そして、「生活費を作って送金する」と彼女に誓って、メイルが向かったのは、海辺の有名な温泉街だった。
その間に、彼女は母親の命令で、まだ高校2年生だったのに、母親の意中の男と結婚してしまった。
それを知らされたメイルは、何もかもがアラン・ドロンだった。
メイルの青春の1ページそのものだった。
以来、メイルは、アラン・ドロンが愛した少女の母親のようなタイプの女性、アラン・ドロンの妻のような女性を選んで、つき合った。
アラン・ドロンになったつもりで、自己陶酔していただけだったのかも知れないが、どこかで復讐している気持ちもあった気がする…。

どちらにしても、タバコの吸い方だけはそのアラン・ドロンの影響を間違いなく受けた。
これだけの禁煙ブームなのに、これだけタバコ代にも窮しているのに、今なお、メイルが酷いチェーンスモーカーであることに変わりはない。
心のどこかで肺ガンを心配しながら、「アラン・ドロンのように若い女性と恋に落ちることなど一生ないのだろうな」と苦笑している。
けれども、すべての夢を棄てたわけではない。
生きている間に、フェデリコ・フェリーニの故郷であるこの映画の舞台、アドリア海に面した北イタリアの小さな田舎町リミニに何が何でも行ってみたいと考えている。
なぜなら、メイルが家出して住み込んだ海辺の温泉街とあまりにも違う風景だったから…。
だからこそ、気になるセキに悩みながら、メイルは「母さん、父さん、それまではまだ話に行きたくないよ」と小春日和の空を見て思っている。
「さあ、そのためにも早く義理を返さなきゃ…」
メイルは、強く決意してもいるのだが…。








































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介護人 メイル・GIVEソン

Author:介護人 メイル・GIVEソン

介護なんて、「する側」も「される側」も現実であってほしくないと毎日願って過ごしている。
ある日突然、前ぶれもなく目の前にそれが現れた…。

東仙坊の、介護用ハンドルネーム「メイル・GIVEソン」が、好きな映画と対照して、お届けする介護ブログ。
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