介護人メイルの、悔悟、改悟、開悟、戒護。
介護士、いまや介護師。そして、ジョン・レノン。
ビートルズ世代であるメイルは、ジョン・レノンの存在をずっと気にかけていた。
天賦の才能を持つ卓越したミュージシャンとしてはもとより、いわゆる孤軍奮闘する「ピースメーカー」としてよりも、その恋愛観にこの上ない興味を抱いていた。
「ザ・ビートルズ」としてのデビュー前に、アイロニカルなアイリッシュ系英国女性とできちゃった婚し、
世界中の誰からも愛されるバンドになった後、摩訶不思議な前衛芸術家の日本女性と結婚し、
「ザ・ビートルズ」解散後、その日本女性と別居中には、すぐそばにいたごくノーマルで影の薄い中国女性と同棲し、
やがて、日本女性との間に子どもをつくり、ハウスハズバンドになったという恋愛プロセスに、ただただ「フーン」という違和感を持っていた。
確かに、蓼食う虫も好き好き、ということぐらいメイルだってよく知っていたけど、どの女性も、メイルが個人的に好きになるような気がしなかったからである。
間違いなく、あの時のジョンなら、世界中のどんな女性だって好き勝手にできたはずである。
だから、1980年12月8日、ビッグアップルのダコタハウス前で、ジョンが射殺されたという衝撃的なニュースを聞いたとき、メイルは戦慄のあまり茫然自失し、「いいじゃないか40歳まで生きられたんだから…」と考えて、納得するしかなかった。
と同時に、憂国し割腹自殺した三島由紀夫をなぜか思い出していた。
自分の意志で死を選択し、介錯によって見事なまでに切り落とされた三島の眼は、その切り離された胴体部分をしっかりと凝視していたという噂があった。
ジョンはサインまでしてあげた男に撃たれた瞬間、どんな気持ちでその暗殺者の顔を見たのだろう?
メイルは、ジョンのことだから、きっと苦笑いしただろうな、と決めつけていた。
40歳を大きく超え、介護に奔走するメイルは、たった一つジョン・レノンにジェラシーを感じていることがある。それは、ワーキングクラス出身でありながらあれだけの驚異的名声と巨万の富を得たことに対してではなく、
「ジョン・レノンよ!キミは、少なくとも人生の中で、1度も介護の心配をする必要がなかったのだから…」という点である。
その意味で、メイルも“ジェラスガイ(やきもちやき)”なのである。
2007年、12月8日。
メイルは今日もホームに向かう途中、ジョンの命日であることばかりが話題になっていることに多少嫉妬を感じながら、
「今日は、トラトラトラ、真珠湾奇襲攻撃をして、その結果、いまなお世界の卑怯者のような扱いをわれわれ日本人は受けているんだ。そのことのほうが、日本人にとってどれだけ大きな問題なのか?もちろん、実際は、単なる日本の外務官僚の怠慢や米国の深慮遠謀だったことぐらいわかっている。66年も経っているのに、なぜそんな誤解一つ正式に晴らせないのか?すごく悲しいし、悔しい」
ことしはインフルエンザが異常に流行っているらしい。
父親も母親もワクチン接種はしているはずだが、インフルエンザ感染が心配である。こうして、ホームに向かう以上、自分自身も感染するわけにはいかない。
万が一のことを考え、メイルはマスク着用を忘れない。
最後に、突然、ジョン・レノンの歌が一つ脳裏を駆け巡ったので、その内容をご紹介する。
ホームからの連絡で、どうやら母親が肺炎にかかってしまったらしい。
メイルは半狂乱したように、車の中で、ジョン・レノンのその曲のリピートの部分だけを大声で歌い始めた。
「Mama don’t go, Daddy come home…」
☆介護の重要ポイント5
介護施設などに家族をあずけていると、その悔悟から、時として傲慢になりがちになる。
介護士たちは基本的に公務員ではないだけでなく、ボランティアでもない。
それどころか、社会的貢献度の高い有意義な仕事にもかかわらず、極めて安い給料で働いてくれている貴重な人たちなのである。特に介護保険制度が改正されて以来、ひどい給料になってしまっているのである。
そのことを忘れて、利己的な対応をすれば、必ずその家族に反動があるのは致し方ない。
どんな世界でも最も重要なことはリレーションシップである。
ほんとうに悔悟があるなら、介護士たちといい関係をつくるべきである。
ブログランキングに、投票おねがいします。

天賦の才能を持つ卓越したミュージシャンとしてはもとより、いわゆる孤軍奮闘する「ピースメーカー」としてよりも、その恋愛観にこの上ない興味を抱いていた。
「ザ・ビートルズ」としてのデビュー前に、アイロニカルなアイリッシュ系英国女性とできちゃった婚し、
世界中の誰からも愛されるバンドになった後、摩訶不思議な前衛芸術家の日本女性と結婚し、
「ザ・ビートルズ」解散後、その日本女性と別居中には、すぐそばにいたごくノーマルで影の薄い中国女性と同棲し、
やがて、日本女性との間に子どもをつくり、ハウスハズバンドになったという恋愛プロセスに、ただただ「フーン」という違和感を持っていた。
確かに、蓼食う虫も好き好き、ということぐらいメイルだってよく知っていたけど、どの女性も、メイルが個人的に好きになるような気がしなかったからである。
間違いなく、あの時のジョンなら、世界中のどんな女性だって好き勝手にできたはずである。
だから、1980年12月8日、ビッグアップルのダコタハウス前で、ジョンが射殺されたという衝撃的なニュースを聞いたとき、メイルは戦慄のあまり茫然自失し、「いいじゃないか40歳まで生きられたんだから…」と考えて、納得するしかなかった。
と同時に、憂国し割腹自殺した三島由紀夫をなぜか思い出していた。
自分の意志で死を選択し、介錯によって見事なまでに切り落とされた三島の眼は、その切り離された胴体部分をしっかりと凝視していたという噂があった。
ジョンはサインまでしてあげた男に撃たれた瞬間、どんな気持ちでその暗殺者の顔を見たのだろう?
メイルは、ジョンのことだから、きっと苦笑いしただろうな、と決めつけていた。
40歳を大きく超え、介護に奔走するメイルは、たった一つジョン・レノンにジェラシーを感じていることがある。それは、ワーキングクラス出身でありながらあれだけの驚異的名声と巨万の富を得たことに対してではなく、
「ジョン・レノンよ!キミは、少なくとも人生の中で、1度も介護の心配をする必要がなかったのだから…」という点である。
その意味で、メイルも“ジェラスガイ(やきもちやき)”なのである。
2007年、12月8日。
メイルは今日もホームに向かう途中、ジョンの命日であることばかりが話題になっていることに多少嫉妬を感じながら、
「今日は、トラトラトラ、真珠湾奇襲攻撃をして、その結果、いまなお世界の卑怯者のような扱いをわれわれ日本人は受けているんだ。そのことのほうが、日本人にとってどれだけ大きな問題なのか?もちろん、実際は、単なる日本の外務官僚の怠慢や米国の深慮遠謀だったことぐらいわかっている。66年も経っているのに、なぜそんな誤解一つ正式に晴らせないのか?すごく悲しいし、悔しい」
ことしはインフルエンザが異常に流行っているらしい。
父親も母親もワクチン接種はしているはずだが、インフルエンザ感染が心配である。こうして、ホームに向かう以上、自分自身も感染するわけにはいかない。
万が一のことを考え、メイルはマスク着用を忘れない。
最後に、突然、ジョン・レノンの歌が一つ脳裏を駆け巡ったので、その内容をご紹介する。
「お母さん」
お母さん、あなたは僕を持ったけど、僕はあなたを持たなかった。
僕はあなたを欲したけど、あなたは僕を欲しなかった。
だから、あなたに言うしかない、さよなら、さよならと。
お父さん、あなたは僕を残したけど、僕はあなたを残さなかった。
僕はあなたを必要としたけど、あなたは僕を必要としなかった。
だから、あなたに言うしかない、さよなら、さよならと。
子どもたち、僕のやったようなことは、してはいけない。
僕は歩けなかった。でも、走ろうとはした。
だから、あなたたちに言うしかない、さよなら、さよならと。
お母さん、行かないで。
お父さん、帰ってきて。
お母さん、行かないで。
お父さん、帰ってきて。
ホームからの連絡で、どうやら母親が肺炎にかかってしまったらしい。
メイルは半狂乱したように、車の中で、ジョン・レノンのその曲のリピートの部分だけを大声で歌い始めた。
「Mama don’t go, Daddy come home…」
☆介護の重要ポイント5
介護施設などに家族をあずけていると、その悔悟から、時として傲慢になりがちになる。
介護士たちは基本的に公務員ではないだけでなく、ボランティアでもない。
それどころか、社会的貢献度の高い有意義な仕事にもかかわらず、極めて安い給料で働いてくれている貴重な人たちなのである。特に介護保険制度が改正されて以来、ひどい給料になってしまっているのである。
そのことを忘れて、利己的な対応をすれば、必ずその家族に反動があるのは致し方ない。
どんな世界でも最も重要なことはリレーションシップである。
ほんとうに悔悟があるなら、介護士たちといい関係をつくるべきである。
ブログランキングに、投票おねがいします。
Comment



